ソースといえば卓上の調味料を思い出しますが、今回は別の「ソース」のお話。
西洋料理に欠かせないソースはなぜ生まれ、どういった役割を持つのか。
今回は、西洋における料理文化の核ともいえる、その概要をご紹介します。
ホワイトソースやドミグラスソース、トマトソースなどさまざまなソースの味わいは、西洋料理の大きな特徴のひとつです。
ソースが重要な鍵となる料理は何といってもフランス料理。「フランス料理はソースで食べる」という言葉もあるほどです。では、どんな理由でソースが生まれたのでしょうか。料理人たちは、さまざまな材料を煮てできた汁に、素材独自の「うまみ」が凝縮されていることを発見しました。それらを料理の味を引き立てるよう、工夫を凝らしてつくったのがソースというわけです。 いかにおいしいソースをつくるかが、料理人の腕の見せ所にもなりました。
帝国ホテルの料理長を務めた村上信夫氏は、著書*の中で「フランス料理のソースの種類は約700種」と述べています。しかし、その基本となるソースは少なく、マザー・ソースとして次の5種類を挙げています。
白 | ソース・ベシャメル (バターで小麦粉を炒め牛乳でのばしたもの。ホワイトソース) |
茶 | ソース・エスパニヨール (小麦粉を色付くまで炒めトマトを加え煮たもの。ブラウンソース) |
赤 | ソース・トマト (小麦粉をバターで炒めたルーとトマトを煮たもの) |
黄 | ソース・マヨネーズ(卵の黄身とサラダ油をかきあげたもの)、 ソース・ビネグレット(酢とサラダ油を混ぜ合わせたもの。フレンチドレッシング) |
村上氏は、ソースを料理の一部ではなく、「料理そのもの」と位置づけています。
フランスだけでなく、イギリスのグレイビーソース、イタリアのペスカトーレなど、各国で独自のソース文化が育まれました。西洋料理をいただく時、そういった歴史に思いを馳せるのも一興でしょう。
*「村上信夫の西洋料理」(経済界)
※取材協力 ビストロ デ のんき