蕎麦

美味しい話 ~蕎麦~

日本の味のひとつとして親しまれているそば。おいしいそばの紹介は
グルメ雑誌の定番企画となり、近年はそば打ちがブームになるなど、
そばは日本人の心を魅了してやまない国民食といえそうです。
今回は、そばの歴史や種類について、さらりと“手繰って”みましょう。

知るほどに、味わい深し — そばのお話

そばの原産地は中国。朝鮮半島を経由して日本に伝わり、各地で栽培されるようになりました。奈良時代に編さんされた「続日本紀」には、飢饉に備えるためにそばの栽培を奨励する記述が見られます。当時は麺ではなく、「そばがき」にして食べていました。

細長い麺状の、いわゆる「蕎麦切り」が登場した時期については定かではありませんが、長野県木曽郡の定勝寺の文書に、1574年の仏殿修理工事の際にそば切りを振舞ったことが記されています。また、1643年に刊行された日本初の料理専門書「料理物語」には、そば切りのつくり方が紹介されました。江戸時代には、すでに身近な食べ物として親しまれていたことがわかります。

そば切りの普及とともに、そば粉とつなぎ(小麦粉)の割合によるいくつかの種類が生まれました。そば粉だけを使う「十割」、そば粉とつなぎの割合が8対2の「二八」、7対3の「三七」などです。また、そば粉の種類によっても分類されます。そばの実の中心部を挽いた白い粉を使った「更科」、そば殻まで挽いた黒っぽい粉を使った「田舎蕎麦」が有名です。ゆずや抹茶を練りこんで独特の風味をつけた「変わりそば」もあります。

香りや歯ごたえ、喉越しなど、味わいにはそれぞれ特徴がありますが、日本橋に店を構えるそば屋のご主人によれば、おいしいそばを提供するには何より「三たて」が不可欠だとか。

「挽きたて、打ちたて、ゆでたて。これがいわゆる“三たて”です。そばのおいしさはこれに尽きます」

冬に味わうそばといえば、もっとも馴染み深いのが大晦日の「年越しそば」です。その起源には、細く長く達者に暮らせるようにと縁起を担いだという説や、よく切れるそばにならって一年の労苦をさっぱりと切り捨てる、など諸説があります。

ゆく年を振り返りつつ、長い時に育まれてきたそばの歴史にも思いを馳せれば、一杯のそばも格別な味わいになることでしょう。

 

※取材協力 利久庵

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